2024年

2月にポエデイがあり、3月にみそのの詩歌賞があった。

1月

1月1日(月)

元日の仕事終わり、帰路の参野町交差点でバイクが揺れる、と思ったらそれが能登半島地震だったと知る。自宅で豚肉を食べて田町のシネマイーラへ赴き初映画。花腐しを、私ともうひとりの他人と2人だけの観客で観る。ピンク映画界という狭くて誇り高い世界を描いていたのと栩谷と伊関の酒の飲み方が良い。さとうほなみの演じた祥子の明るさに救われたけれど、元日に観るには湿っぽい映画だ。万葉集を手にとってみたくなる。

春されば卯の花腐し我が越えし妹が垣間は荒れにけるかも

1月2日(火)

シネマイーラで愛にイナズマを観る。折村家全員赤服に笑う。人情に欠ける令和の風潮へ抗う昭和の家族という感じ。2日にやっているスーパーは浜松駅地下の成城石井くらいなもので鰤を買って帰る。

1月7日(日)

来月開催するポエデイの情報を中日新聞静岡新聞へ送る。両者とも私の写真を記事で使っているのでそのことに触れながら。夜の入浴後に眼鏡をなくす。

1月8日(月)

ポエデイの情報をFM Haro!とk-mixと浜松ケーブルテレビ(ウェンディ)へ送る。浜松ケーブルテレビの池島さんから返信がある。浜松駅のメイワンで新しい眼鏡john dillingerを買い、法多山へ行って厄難消除の火を見る。夜に眼鏡が見つかる。

1月12日(金)

非番。塚田千束『アスパラと潮騒』短歌研究社や村井康彦『藤原定家『明月記』の世界』岩波新書を読みながら、浜松駅メイワンのスターバックスや新浜松駅のプロントで短歌連作30首の推敲をする。40首から30余首へ削る。新人賞の水準に達する連作にはならない。もっと錬るか、とりあえず出してしまうか。一首評を書き、昼食はメイワンの一風堂にて摂る。

同属の居らぬツチブタ目を閉じて夢の中でも誰にも会えぬ/塚田千束(『アスパラと潮騒』短歌研究社)

白川ユウコさんは京都の件でポエデイに来場しないけれど関わりを持ちたいということで1月19日に会う約束をする。提案は歓迎する。夕方にアクト・アート・ストリートの準備のため多行形式をカーボン紙で転写し厚紙に貼る。

1月13日(土)

藤原定家の愚記をまねてこの誤記をはじめる。k-mixを聴きながら久しぶりにhtmlとJavaScriptとcssを打っていると、若い東京の、たとえば下北沢の窓辺のような雰囲気に包まれる。詩客で短歌連作郵便的な、あまりに郵便的なが公開される。安田茜さんの連載ゆくと同時公開。同じ翼の歌でも漢字率の違いによる文字圧の違いがある。

もう二度とひろげることのないつばさだけどあなたはそのままあなた/安田茜(連載短歌第3回「ゆく」

おしりたんていを観ながら、川野里子『ウォーターリリー』短歌研究社を読みはじめる。連作のテーマのつながり方を掴んだ気になる。午後三時ころから雨風が激しいけれど、夕までに晴れる。

鳥の骨見たることなし完璧な埋葬をせし青空広がる/川野里子(『ウォーターリリー』短歌研究社)

ムジカ・ピッコリーノを観ながら『ウォーターリリー』を読み、一首評を書く。yesのroundabout、逆再生、頭の上の少し離れた宙から無数の糸で吊り下げられるように作歌をすればよいのだと気づく。でも、どうやって?

あわあわといちめんすけてきしゆえにひのくれがたをわれは淫らなり/村木道彦(「緋の椅子」

1月14日(日)

このhtml手打ちサイト「誤記」のアドレスのherは英語ではなくトルコ語の「どれも」「それぞれの」「すべての」の意味をもつ形容詞、ペルシャ語のﻫﺮ由来のことば。朝にsitemap.xmlなどをいじり、ロリポップと3年契約する。それから少し推敲、またはアクト・アート・ストリートの準備。リソグラフ印刷も考えていたけれど成子町のプスプス byZINGが搬入日までに開かないので自分でなんとか作品をこしらえるしかない。

つまり、野田にとって重要なことは、男が女になったり、女が男に変身したりすることではなく、両性の境界を自在に飛びこえる姿を見せることで、二つの性に「わかれわかれになる」はるか以前の始原的状態(天使的状態)をまばゆい閃光のうちに暗示することなのだ。野田があれほどことば遊びや語呂遊びに趣向をこらすのも、それが一つのことばに対照的な二つの意味=性を持たせてしまう、いわば両性具有的仕掛けであるからだろう。(扇田昭彦『日本の現代演劇』岩波新書)

野田秀樹の演劇について。社会実験踊り場の曽布川祐さんが持つautismやことばへの関心に師である扇田昭彦の影響を見つけられる。昼、歩いてまちなかへ。最近moonstarの靴ばかり買って履いている。そのなかでも810sのkitcheは用宗港にあった雑貨店Timeless Gallery&Storeの閉店セールで買った靴で、厨房用と店員から聞き、その簡素さを気に入っている。駅前メイワンの谷島屋浜松本店で『歌壇』2月号を読む。

しなやかなめまいがあって手をついた場所から果樹が広がってゆく/早月くら(「ハーフ・プリズム」

歌壇賞の早月くらさんとは去年5月の第9回詩歌トライアスロン三詩型融合部門受賞作水棲の石のときからすでに差があったけれど更に大差をつけられる。透明感あふれる早月世界の手際よさ、そのまま進んでいって欲しい。13時からアクトの研修交流センターにて文化芸術活動ビルドアップ講座として橋の下世界音楽祭の根木龍一さんとりんご音楽祭のdj sleeper古川陽介さんのお話を聴く。遠州でのおもしろい詩歌新人発掘オーディション、スタッフも楽しめる働きかけ、悪者を作らない場設計などやらなければいけないことが増える。少なくとも社会に対して誠実な、それでいてダサくない詩歌企画をやろう、と思う。同じ講座を宮沢賢治を朗読していたえんさんが聴講しており、帰路、東海道本線に沿って浜松駅へ向かいながら話す。

1月15日(月)

美薗中央公園でみそののお花見を今年もやるというので、みそのの詩歌賞(仮)とかできればいいな。短歌部門・自由詩部門・俳句部門にmp3部門などの部門を設けて、県内外の選者と花見をしながら、それぞれの部門の候補作から大賞を決める。地方文芸賞を刷新する気概を込めて。

1月16日(火)

風が強く気温10度に達しない寒い日、靴底がはがれそう。

1月17日(水)

俳句連作10句の推敲をする。と言っても去年作った連作の手直し程度。多行形式俳句は発表形式ではなく創作形式だろう。そういえば、澤好摩さんが他界したので円錐新鋭作品賞は存続するか気になっていたけれど、小林恭二さんを特別選者に迎えて存続となり嬉しい。

指の先で尖った顎の先から、首筋、胸、乳房まで強く押しながら滑らせた。赤い線が出来た。キクはアネモネの全身を赤く染めたいと思った。(村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』講談社文庫)

『コインロッカー・ベイビーズ』を25年ぶりくらいに読んでいる。当時はアネモネのかわいさを受け入れられなかったけれど、指で触れただけで赤く変色する美少女描写はすごい。薬島の前後だからだろうけど肉体の化学反応への並々ならぬ興味をかきたてる。夜に現代詩歌のプラットフォームsuiuへ今日からの歌会の題「旬」で〈旬刊のうすい頁を朱で濁す人にも読める数は骸だ〉という短歌を投稿する。

1月18日(木)

円錐編集部とメールのやりとりをする。昼前からあたたかい小雨。前の靴はもう左の靴底が半分摩耗して内側が露出していて砂利を歩くと骨に響くので、今日からmoonstarのSPLT SDM01を履き始める。通常の靴底ラバーより強度1.5倍の性能がどのくらいのものか気になる。配達員は靴が命だ。

1月19日(金)

5時に起きて放送大学中国語Ⅰの単位認定試験を自宅で受ける。一作家を集中的に扱いたいので次に受講するのは宮沢賢治と宇宙('24)『枕草子』の世界('24)だろう。いずれにせよ興味の範囲、つまり活動の範囲を限定したい。今のところは「詩歌」「トルコ語」「スピノザ」「情報技術」「ボードゲーム」かな。7時半からメイワンのスターバックスでトリプルエスプレッソラテを試しながら、ポエデイ朗読タイムスケジュール遠隔打ち合わせと詩客受賞連載の俳句連作を推敲をする。Rensak - 連作並び替えツールが便利。10時にアクトシティ地下の財団事務室にある浜松アーツ&クリエイションへ赴き、矢川さんへアクト・アート・ストリートの展示作品を搬入する。新しくできたアクトラウンジB101かアクトラウンジ201にて1月22日から展示されるらしい。矢川さん曰く、浜松アーツ&クリエイション自身も展示企画ははじめてなので「アットホームな感じ」になりそう、とのこと。良いね。

アクトプラザラウンジB101

アクトシティからの帰りに浜松駅北口地下広場を通ると円周に沿って約10人の路上生活者やその仮寓が横たわる。コロナ禍前より人数が増えている。

車椅子のあるホームレスの家

メイワンの一風堂で食べたあと13時ごろからアクトプラザラウンジB101にて白川ユウコさんと会談する。ポエデイやみそのの詩歌賞(仮)など、遠州や浜松市の詩歌界を盛り上げていく話をする。E4金子さんや泉由良などと連絡し、みそのの詩歌賞(仮)の話をある程度まとめて15時前に解散、鰤と餃子を買って帰る。

1月20日(土)

雨の子守なのでみそのの詩歌賞(仮)のウェブ周りをつくる。昼に宮本常一『忘れられた日本人』岩波文庫が届く。

日本中世の文学が隠者によって保持せられて来たことと、村々の隠居制度には共通するものが多分にあると見られる。村においては隠居たちが文化伝承の役割をになっていたのである。(宮本常一『忘れられた日本人』岩波文庫)

日本現代の地方都市においても俳句や短歌など短詩文芸は隠居の高齢者によって保持されている。そういえばJAXAの無人探査機SLIMが月面に着陸したという。私も月面を目指さなければならない。徒労に終わるかもしれないけれど、何を言われたとしても、やってみるという気持ち。

1月21日(日)

みそのの詩歌賞(仮)へ公園長の許可が下りる。雨、東名と伊勢湾岸道と名古屋高速4号線を乗り継いで名古屋水族館へ赴く。ガーデン埠頭には水先案内船のほかアニメ「宇宙よりも遠い場所」を観て気になっていた南極観測船ふじがある。名古屋水族館にてムカシクジラ亜目ambulocetus natansの化石標本を見る。

ambulocetus natansの化石標本

昼飯ののちイルカのパフォーマンスを観て、海亀の餌やりを観て、シャチのアースによる公開トレーニングを観る。イルカやシャチは餌や愛撫のためにショーをしているのか、それとも自己実現のためにショーをしているのか考える。スタジアムで児のこども園ともだち一家と偶然会う。さかなくんとシャーク香音が出演するEテレの「ギョギョッとサカナ★スター」の影響で魚と水族館は今のこどもたちに人気なのかもしれない。我が家も昨日の放送で観たアカアマダイを探しに浜松市から名古屋市へ来たのだ。

1月22日(月)

みそのの詩歌賞のウェブ周り、審査員紹介文がそろったこともありかなり進む。先週から臘梅を見る。毎日俳壇の西村和子欄に私の俳句〈散るように風に流され冬の蝶〉が掲載される。駅前の磐田新聞堂で朝刊を買う。ここは看板が欠けて毋日新聞になっている。

1月23日(火)

極寒、最高気温4度で風も強い。バイクを走らせての体感は零下5度以下。名古屋や天竜区では積雪したという。もちろん浜松市街や磐田市街には雪すら降らない。

1月25日(木)

suiuへ今日からの歌会の題「鳩」で〈北風のなかでも君は鳩笛を通った風だ 主文は後で〉という短歌を投稿する。浜松市民文芸第69集は、詩も自由律俳句も川柳も入選と通知が来る。

1月26日(金)

朝、喉が痛い。中泉にある肉のおおいしの正面、魚七跡地の北東に、北西へ昇る階段がある。その階段の北東に好ましい煉瓦積みがある。

磐田市中泉の煉瓦積み

ふと、詩都浜松構想で、詩学校よりも開くべきは文芸テクノクラート養成講座かもしれない、と思う。文芸イベントを企画立案し開催まで遂行する実働部隊を育成する。それと、まちなかの空き家へのポエット・イン・レジデンスや中山間部での半詩半農生活。帰路に南図書館で日本短歌総研『固有名詞の短歌 コレクション1000』飯塚書店を借りる。やはり人名短歌は立体的で好き。

カフカ忌の無人郵便局灼けて賴信紙のうすみどりの格子/塚本邦雄

1月27日(土)

短歌30首連作を仕上げる、というより諦める。

ラジオ講座聞きおりしわれに深夜の北京放送中国民謡/岸上大作

海外から届くラジオ放送には浪漫がある、結果の見えない詩作にも似て。児と遠鉄バスで駅前へ行き、谷島屋で林徹『トルコ語文法ガイドブック』白水社を買う。それからアクト・アート・ストリートの展示を観る。ポエデイのハガキも並べて置いてくれている。

多行形式俳句2句、郵便短歌集『ワセリン』、自由詩「入院生活」

浜松科学館みらいーらへ赴く。頻繁に行くので年間パスポート1500円を購入、3回行けば原資を上回る。やまちゃんのサイエンスショー「ロケット」を観て、カフェでサンドイッチを食べる。昼にプラネタリウムで今夜の星空解説と宇宙大爆発を観る。星の数ほどいる、の星の数が人に視える星の数ならその意味はこの百年でずいぶん変わっただろう。

浜松科学館のプラネタリウムケイロンⅢ・ハイブリッド

みしまんのサイエンスショー「風」を観てから、ミニワークショップにて圧電効果で発電し発光するおもちゃをつくる。こどもの光る靴も同じ原理だろう。ザザシティを経て、尾張町のみかわや|コトバコへ赴き、行商バロックを見学する。児が栞で遊んでいた虹釜太郎『カレー野獣館 赤』円盤を買おうとすると店主が不在だったのでその場にいた女性に電話で店主を呼んでいただく。赤の他に黄・緑・黒と三色あるようなので機会があるごとに一冊ずつ買い足したい。

そうしてこどもたちが麦わら帽を百も二百もなくすようなほどの時間を経た後にその地で行方が知れぬようになる人が増えはじめて空の縞々をその地の方法で数える者がいなくなる(虹釜太郎『カレー野獣館 赤』円盤)

それにしても熱量が半端ない本だ。全段落が爆音を立てて、読む者へ迫ってくる。それでいて粘りつくような郷愁がある。こんな凄い人が彦根にいるのか。まだ自分の世界は狭かった。この列島には詩歌を専門としない人に真の詩歌人がいる。

コトバコの看板

1月28日(日)

新都田郵便局の差出函へ短歌連作30首を投函する。紅白の梅が咲き、蜜柑の樹に雄の頬白がとまるフルーツパーク時之栖で、児と苺狩をする。ビニルハウスEにかおり野・よつぼし、ビニルハウスFに紅ほっぺ・はるひ・章姫・すずといった品種が育てられ、章姫は果肉がやわらかく甘い。よつぼしも佳味で、すずも中身まで赤く良い。昼飯にピザを食べ、恐竜広場へ行く。動く恐竜たちの痛みが激しい。車で児を昼寝させたあと細江町中川にあるテクノランドの東、銅鐸公園へ赴く。滝峰才四郎谷の奥まったところに埋められた銅鐸のレプリカがある。

滝峯才四郎谷の銅鐸

気賀にある姫街道と銅鐸の歴史民俗資料館も訪れる。歴史民俗資料館はこのご時世にテレホンカードを販売している。浜松市で出土した銅鐸の多くは三遠式で、新しい時代の突線紐式に属するという。

浜名湖に汽車かかれりとへども水の湛へを見む心なし/杉浦翠子

1月29日(月)

白拍子で寒木瓜の花を見る。

1月30日(火)

杉花粉がもう飛んでいて、洟水が垂れる。

1月31日(水)

小雨。suiuに歌会の題「犬」で〈猟犬のただ生きているだけという顔 味のない歯磨きをして〉という短歌を投稿する。Zeynep Bastıkを聴く、アルバニアの血をひくトルコ人歌手で、いつも肌露出の多い衣装を着ている。bundan böyleから入ったけれど、bırakman doğru muaraも良い。トルコポップの特長か、バラード調が多い。こぶしをきかせて湿っぽく謳い上げる感じ。ZeynepはSezen Aksuのbu geceを謳っており、そういった目に見えないトルコの女性歌手の系譜があるのだろうか。

2月

2月1日(木)

異動で局を去る人もいて来る人もいる、あたたかい日。地方都市で詩歌イベントもやり詩歌賞もやり、足りないのは宣伝・広告のための媒体、詩歌メディアだ。詩政紙「沈黙交易」を詩政誌「沈黙交易」へ改組するとか、NPO法人沈黙交易とか。帰路に南図書館で山階基『夜を着こなせたら』短歌研究社を借りる。

人生の車体にかすり傷をつけきらめくばかり銀貨や銅貨/山階基(『夜を着こなせたら』短歌研究社)

2月2日(金)

夕刻、ポエデイのスタッフをできるか打診していた方に指で×印を示される。有望な人材なのでまた別の機会にでも呼びたいな。こんな夜はBeyondの他閉症を聴きたい。

2月3日(土)

最近夢を見ない。MOMMYJIのファンタジー Feat. Motifな夜から朝へ。詩客で俳句連作グロブスターが公開される。西脇祥貴さんやまつりぺきんさんや丑丸敬史さんと同日掲載だ。

こんにちは当事者感の欠如です/まつりぺきん(そんなんだったら結婚しようよ

子守り。南図書館で富田睦子『声は霧雨』砂子屋書房や正木ゆう子『玉響』春秋社を借りる。区分口に一首評を書く。

わけもなく大丈夫なり冬青空/正木ゆう子(『玉響』春秋社)

2月4日(日)

立春。アマゾンの荷物、NECのVersaProが昨夜ヤマト運輸で届くはずだったけれど今日届く。先月末の大量解雇や2024年問題やアマゾンのセールの影響だろうか。

袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ/紀貫之

午前にシネマイーラでアキ・カウリスマキ監督の枯れ葉を観る。上映時間が1時間半もなくて嬉しい。北欧の底辺労働者たちの酒と愛と唄だけを楽しみとする簡素な暮らしぶりと陰鬱なユーモアが好ましい。あと、アンサの住む部屋の色合いがくすんでいて良い。

2月4日のシネマイーラ前

劇中歌、Maustetytötの謳うsyntynyt suruun ja puettu pettymyksinも記憶に残る。歌詞も「私は囚人永遠に/墓場すらフェンスだらけ」とか。

午後はアクト・アート・ストリートに在廊する。テツジ山下さんと糀谷未有さんとかとうなおこさんと同じ時間帯の在廊、まるけの安松さんや鈴木萌子さんと話す。浜松ハンドメイドマルシェに寄ってデーツシロップを買ってからフィールで鱈を買って帰る。

2月5日(月)

一日中雨。毎日歌壇の水原紫苑欄に私の短歌〈北を向く信号はみなひび割れて町を逃げ出す気は起こらない〉が掲載される。「浜松百撰」2月号の街ネタ情報局にポエデイの記事が載っていることを今日知る。去年、宣伝用のハガキを佐鳴台の編集部へ郵送しておいてよかった。関東は20cmの積雪という。

2月7日(水)

suiuの歌会、お題「紙」へ〈紙よりも傷つけやすい言葉などあるのだろうか 風は裂けゆく〉という短歌を投稿する。谷脇クリタの歌集『市民たち、売り切れのフロイデ』が犬と街灯から届く。

金網の向こうに原っぱがそのまた向こうには森があり文字のないところまで行ければよかった/谷脇クリタ(『市民たち、売り切れのフロイデ』

2月8日(木)

株式会社ヤンバ運営のシール印刷プロへポエデイのロゴシール印刷を発注する。PNG入稿可だったので。パソコンゲームはRoN空母ラッシュが好きだったけど、さすがにいまさら全部隊を扱う気力も眼筋もないのでCiv5を買う。こちらは陸上機を艦載機として空母に収容できるのが好き。もう余暇は潰れる。

2月9日(金)

詩歌をやるなら言語はラテン語・俗ラテン語からの長い伝統がありGramsciNegriやUmberto Ecoなど先進的な思想家を有し、QuasimodoUngarettiなどの綺羅星のような現代詩人を産んだイタリア語を学ぶべきだろう。でも私の反抗心は、西欧言語よりも新興のトルコ語へ向かわせる。朝、スタバにて富田睦子『声は霧雨』砂子屋書房と『現代短歌パスポート2 恐竜の不在号』書肆侃侃房を読む。区分口に一首評を書く。

はずむ月 リンクの切れた図書館が落葉に沈み込む音がする/我妻俊樹(「海岸蛍光灯」

松城町の中央図書館二階の調査支援室で郷土資料の調べ物をする。昼飯は肴町のララカレーで済ます。本日のカレーはチキンとBeefベジカレー3種盛りで、混ぜて食べる。しばらく口と喉が辛く発汗する。

浜松市中央区肴町のララカレーハママツとカレープレート

浜松ケーブルテレビの今井さんとポエデイについて打ち合わせをする。11時に来場するとのこと。夜に一太郎2024アカデミック版が届く。何かできそうな気がする。

物思へば心の春も知らぬ身に何鶯の告げに来つらむ/建礼門院右京大夫

2月10日(土)

昨夜は早く寝たので2時に目覚めCiv5をする。明るくなってから『林翔全句集』コールサック社を読む。「和紙」は佳句多め。

子の賢愚知らず遥かに蝶光る/林翔

子守り。浜松科学館にて、てんちゃんのサイエンスショー「回転」を観てからサイエンス農園で採れた木綿の種とりをする。昼飯にサンドイッチを食べ、3階に展示されているコンドライトの笹ヶ瀬隕石を視てからプラネタリウムドームで「海竜王モササウルス」を観る。天敵の多い陸に棲む小さな蜥蜴が、丸呑みと胎生を武器に海に逃れモササウルスとして巨大化した逆転劇はムカシクジラ亜目めく。うえちゃんのサイエンスショー「飛ぶ」を観て帰宅する。てんちゃんは科学者味があり、うえちゃんはベテラン感漂うエンターテイナー、山ちゃんは居酒屋実験室。午後にスナックラジオを聴いているとき、ポエデイのシールが届く。

2月11日(日)

昼に早馬町のクリエート浜松へ赴き、はままつグローバルフェアを見学する。トムヤンセンレックやオーストラリアのソーセージロールやインドネシアのバタゴールを食べる。腹が満たされてからインドネシア舞踏を観たりアラビア文字カリグラフィーをしたり災害シュミレーションゲームのカタストロフォイを遊んだりする。「カタストロフォイが起きた」と聞いたときすぐに地震だと思い込むのは地震大国に生きる日本人の癖に過ぎない。南図書館で借りた草壁焔太『五行歌入門』東京堂出版を読む。五行歌発想の動機となった歌は

麦畑だ。
楢の林だ。
高壓線の大鐵塔だ。
六月だ。
野だ。/矢代東村

とのこと。そこからうまれた草壁焔太の五行歌第一号は〈花びらの〉となる。それぞれに呼吸と内在律がある。

2月12日(月)

昼は徳兵衛西塚店へ行く。八十八鰤がぷりぷりして旨い、ホッケは干物しか食べたことがなく生の食感に驚く。それからカインズ浜松市野店へ行く。帰路、南図書館で『現代短歌パスポート1 シュガーしらしら号』書肆侃侃房を借りる。

あなたとわたしの記憶が混ざって見たことのないやわらかなイオンモールが/堂園昌彦(「春は水さえとろけさせる」

2月13日(火)

ZEBRA社のポスモバの使いはじめ。すでにDOSSのごつさが懐かしい。湖西市鷲津のbooks cicalataが取りまとめているフェイヴァリットブックスLへ寄せるZINEへ、短文を寄稿する。そういえば旧中区元目町にあった八月の鯨が一月末に閉業して店番の人へ引き継ぎ、旧浜北区中条のハピネスマルカ203号室にあるフェイヴァリットブックスLが2月25日に移転、と浜松市の二大個人書店の大きな変化が2024年の最初の2ヶ月で起こる。

実は、本を書く人が一番本を読む、読まなければならない。遠州で本を書く人や本をつくる人を育て、そういった人たちをかっこいいと思えるような環境をつくっていき、そこから本を読む人の裾野を広げることで本を買う人を増やし、本を売る人である個人書店を活性化させる道を進めていこう。すなわち必要なのは、浜松古本市・プスプス市春の陣秋の陣・ポエデイ・みそのの詩歌賞・浜松市民文芸・浜松「私の詩」コンクールのゆるやかな連携、そして村上製本・プスプス byZING・ひつじ日和・読書日和・新しいフェイヴァリットブックスの淡いつながりだ。

2月14日(水)

昼は弁当を食べそこねて、磐田グランドホテルアピタ店で磐田野菜たっぷりカツ丼を食べる。水源純さんと月刊『五行歌』の、ポエデイ短詩募集についての記事の確認をする。

2月15日(木)

suiuのお題「甘」に〈蜂蜜の速さで君の名を言おう戸籍ではなく魂の名を〉という短歌を投稿する。

2月16日(金)

浜松市の子安踏切や磐田市の万能踏切でよく貨物列車を見送ることがある。今日は16時前に万能踏切で、西浜松駅を出ただろう上りの貨物列車を見る。

万能踏切へ進入しようとするEF210形電気機関車「桃太郎」

2月17日(土)

朝に『ウンガレッティ全詩集』岩波文庫を読む。小ささと比喩とに俳句の発想が見られる。ermetismoの表現は俳句と近いのだろう。訳がそのまま多行形式になる。

海へ出て
ぼくは
そよ風の
棺に入った
河島英昭訳「宇宙」『ウンガレッティ全詩集』岩波文庫)

一首評を書く。午後に成子町のプスプス byZINGへ赴く。そこで遠州天狗屋の坂田吉章さんやKnotの大杉晃弘さんがつくった『浜松脱撰』を買う。浜松で、書く活動・書いたものの評価を上げる活動・編集する活動・声に出して読む活動・印刷する活動・ZINEをつくる活動・製本する活動・出版する活動・読書会の活動・本を売る活動・デザインや描画の活動がゆるやかにつながるとひとつの豊かな文化圏になるのに。夜にプスプス通信3月号に載せるみそのの詩歌賞の二色刷り広告原稿をメールで送る。

2月18日(日)

一首評を書く。午前に、浜松シティマラソンを迂回して、平口の飛龍街道沿いにあるバルハウスへ赴く。妻がセミナーを聴くあいだ、柄谷行人『帝国の構造 中心・周辺・亜周辺』岩波現代文庫を読む。双系制など柄谷ならではの用語が出てきて頭に入りやすい。昼は、ぶたの大地サンストリート浜北店のザンギ定食を食べる。『パルクの文学講義』を借りた城北図書館にいるとき、静岡県現代俳句協会の滝浪武会長と電話でポエデイについて話す。協会の仕事について打診される。

シラーは詩人を二つのグループに分けています。すなわち 直感の (ナイーヴ) 詩人と 自意識の(センチメンタル) 詩人です。(オルハン・パルク、山崎暁子訳『パルクの文学講義』岩波書店)

私は自意識の側に属するだろう。春の小雨のなか布橋二丁目のカフェ・ドロップへ赴く。ポップコーンとチャイミルクと紅茶スコーンを頼む。児がディスプレイのおもちゃを壊してしまい謝罪、帰宅したのちとんぼ返りで再訪問し図書券二千円分を渡す。

春陰や児のために頭を下げて/甲太郎

カフェ・ドロップのカウンター

2月19日(月)

降ったりやんだりの雨。毎日俳壇の小川軽舟欄に私の俳句〈さざんかや潮騒遠き精神科〉が掲載される。順立のときにふと官能小説家になりたいと思う。夜遅く帰り、鰹のたたきを食べながら筑摩書房の『新校本宮沢賢治全集』第一巻を読む。大正七年十二月に次の歌がある。色がいい。

沈み行きてしづかに青き原をなす炭酸銅のよるのさびしさ/宮沢賢治

2月20日(火)

気温23度に達する初夏の暑さ。杉花粉も大量に飛散して眼をこする同僚や洟をすする同僚が多い。けれど私は昨日ヤクルトのおいしいはっ酵果実を飲んだので症状は軽い。そういえば、ポエデイ短詩の投稿数が多くなると動画編集はリスキーなので次回は各部門の候補作と部門賞作品のみをポエデイ期間中にはままちプラスのデジタルサイネージへ放映するという方法でやりたい。

2月21日(水)

雨が降ったりやんだり。府八幡宮北の坂道に植えられている河津桜が咲いている。第6回浜松私の詩コンクールへ投稿した詩が静岡県詩人会長賞に決まったと知らせる葉書が届く。

2月22日(木)

雨が降り続く。遠州詩歌メディアとして43詩歌を開設しようと思い立つ。静岡県西部の詩歌情報を投稿してもらったら掲載するメディア、募集広告や受賞報告や新聞雑誌掲載報告や出版報告や協会・結社の人事異動を投稿したもらったら掲載する。私が見つけた情報を掲載してもいいし、詩歌作品欄があるといい。

2月23日(金)

雨、楊子町のお食事処さやで浜名湖産のカキフライを食べる。可睡斎へ赴き、ひなまつり会場を観る。

2月24日(土)

8時にバスで浜松駅まで行く。デジタルサイネージはすでに短詩を街頭に向けて放映している。8時半過ぎに清水さんに新浜松駅高架下はままちプラスの鍵をあけてもらい、出店者の受け入れ体制と音響機器のセッティングを10時までに済ませる。ポエデイのスタッフ遠藤さん来場、壬生キヨム(cieliste)さん、へにゃらぽっちぽーさん、谷脇クリタ(犬と街灯)さん、にゃんしーさん、泉由良(白昼社)さんと出店者が次々に来場する。首都圏から来た麦人3人のポエデイ待機列を11時のポエデイ開会とともに入れる。浜松ケーブルテレビ・ウィンディの今井さんがへにゃらぽっちぽーさんを長く取材している。その後私がインタビューを受ける。

浜松ケーブルテレビの取材を受けるへにゃらぽっちぽー

白川ユウコさん、読書日和さん、オカワダアキナさんが手売りの即席ブースを作る。アーツ&クリエイションの大谷さんや村上節子さんが来てくれる。午前中は人はまばらだったけれど、朗読の時間が近づくと30人以上になり、はままちプラスは満員になる。遠州灘・詩季の鈴木和子さん来場、books cicalataのチカさんや放送大学の学生や浜松オンライン読書会さんやLの読書会のみなさんやズミシーや静岡県現代俳句協会会長の滝浪武さんが来場する。13時からにゃんしー、泉由良、完全版黒ねこのしっぽを切った話の壬生キヨム、へにゃらぽっちぽー、タグワ国歌の谷脇クリタと出店者が朗読する。オープンマイクの熊谷文昭さんやshimeさんも味わい深い。中日新聞の大岡さんの取材を受ける。

にゃんしーの朗読とポエデイの聴衆

オープンマイク

名前 ジャンル・タイトル
福島憲太 はねだひかさんの詩
オカワダアキナ
酔芙蓉 自作詩
熊谷文昭 詩(まどみちお 寺山修司)
大井千明(shime) 歌詩
村上節子 詩 自作

朗読とオープンマイクのあと、聴衆がそれぞれ朗読者のブースへ本を買いに行った。それが私の見たかった光景だ。16時に閉会、16時半には撤収し、ザザシティ本館のフードコートはままつ楽市で石野さん、浜松オンライン読書会さん、谷脇クリタさん、壬生キヨムさん、にゃんしーさん、泉由良さんと会食する。私はphở gàを食べる。19時半に解散し谷脇クリタさんを浜松駅まで見送る。そのときもデジタルサイネージは短詩を放映している。

2月25日(日)

中日新聞朝刊浜松・遠州版にポエデイの記事が載る。suiuの歌会のお題「味」で〈春雨に味があるならともだちがもうともだちでいたくない味〉という短歌を投稿する。掛川市の高久書店で河原こいしさんが主催する短歌の種展へ3首投稿する。

2月26日(月)

仕事で給油カードを一時紛失し疲れる。浜松ケーブルテレビのウィンディニュースさんちょく!の20時からの再放送を観る。トップニュースがポエデイで壬生キヨムさんとへにゃらぽっちぽーさんの朗読が流れる。来場した妻や児も映っている。

2月27日(火)

4月に異動する主任が病欠になり仕事が切羽詰まる。ポエデイで、自分の愉悦が自分の企画でみんながわちゃわちゃ楽しんでいるのを見ることだと気づき、詩歌展示販売会「詩丼」をやろうと思いつく。詩歌なもの或いはもの以外を展示・販売するイベント、音を止められたポエデイとして。でも資金が尽きそう。

2月28日(水)

『短歌21世紀』3月号が届く。2021年3月号の大学短歌会訪問記で放送大学短歌会がとりあげられて以降ずっと届く。

人間になれなかつたと言ふごとく振り向きざまに欠伸す猫は/小川優子

それと、ポエデイで買った壬生キヨム『存在のいつ終わるとも知れぬ星々』cielisteを読む。

あきらめた点灯人夫が差し出した残り火をもらい家に帰った/壬生キヨム

詩客の自由詩原稿を一太郎で書き進める。冗長な気がする。

2月29日(木)

磐田市の国道150号線より南で白木蓮が咲いているのを見る。suiuの歌会のお題「点」に〈青空を青と空とに切り分ける点線として声の鳥たち〉という短歌を投稿する。夕から雨。

3月

3月1日(金)

雨上がりで西北から強い風が吹く。磐田市海老塚のスズエ電機で火災、黒煙が上岡田や大原まで至る。夜に詩丼のページをこしらえ、ポエデイ2とともにはままちプラスの利用申請をする。

3月2日(土)

風が強く、唇が乾く。蜜柑の樹に施肥をする。詩客の自由詩原稿は冗長だったので五つの連のうちパッとしない連ひとつを削り脱稿する。浜松駅の浜松市観光インフォメーションセンターで『浜松百撰』最終号を確保する。

『浜松百撰』最終号2024年3月号vol.796

14時からアクトプラザの文化振興財団事務所で浜松アーツ&クリエイションの中村主幹と1時間くらい話す。そう、組織ではなくイベントなのは既存組織に警戒されないようにするためという理由がある。ラッキー浜松駅前店で散髪したあと、浜松駅北口広場に朱音さんとでっくさんがいたので少し聴く。West Goat Coffeeでフィナンシェとゴートブレンドを味わい、南図書館でジゼル・サピロ『文学社会学とはなにか』世界思想社を借りて帰る。

かつての集まりが同業者の結束を保っていたのとは違い、文学フェスティヴァルは何よりもまず、一般読者の文学の価値に対する信念を養い育てることを目的としている。さらにつけ加えるならば、文学フェスティヴァルは、新人作家たちには承認と正統化の機会を与え、すでに地位を得ている作家たちにとっては、その名声を保ち、象徴資本を維持し強化する場となっている。(ジゼル・サピロ『文学社会学とはなにか』世界思想社)

3月3日(日)

静岡県立美術館の天地耕作(あまつちこうさく) 展へ赴く。我らは儀式の民だ。村上兄弟が土を捏ねて壁をつくる映像、「天地耕作 五」では作品を原則的に非公開にした秘儀的性格などが良い。ロダン館の裏山に野外展示もある。

静岡県立美術館裏山の天地耕作

9月に台風が襲来し、制作地が水没した。それをもって彼らは作品の完成とした。自然との関係から、作品の形を決定したと言える。(植松篤、「天地耕作 弐」1991『天地耕作 初源への道行き』)

3月4日(月)

毎日歌壇の加藤治郎欄に私の短歌〈<audio src=裏声でうたう新古今.wav autoplay>夕焼だけじゃ声にならない</audio>〉が掲載される。もとのかたちは〈<audio src="裏声でうたう新古今.wav" autoplay>夕焼だけじゃ声にならない</audio>〉のはず。縦書きや掲載のためにはやむを得ない。

3月6日(水)

suiuの歌会のお題「敵」に〈全世界を敵にまわして生き残る イスラエルではなく昔のわたし〉という短歌を投稿する。

死は汗のひゆるがごとくきたるべし真夏砲丸投げのわかもの/村木道彦

浜松市民文芸第67集の短歌選評で、掲歌のなかには若さも老いも含まれていると書いた村木道彦さんが亡くなったという。第66集で市民文芸賞に採ってくれたけれど表彰式はコロナ禍で中止になった。

3月7日(木)

天地耕作のことが書いてあるらしいので、南図書館で山本浩貴『ポスト人新世の芸術』美術出版社を借りる。令和五年後期の掛川城観光俳句・短歌で私の俳句〈つわものの石垣撫でる秋思の手〉が入選したと通知が来る。

3月9日(土)

みそのの詩歌賞は自動終了トリガーが正常に機能して〆切、106作品集まる。うち短歌55首・俳句26句・自由詩24篇。朝のうちに審査員へ応募作を届ける。高町の古橋商会へスーパーカブ110で行き、3万5327キロ余でエンジンオイルを交換してもらう。それから早馬町の浜松文芸館へ寄り、俳人松島十湖展をのぞく。十湖による俳句添削の、朱筆や独特な朱印が十湖の息遣いとして感じられる。それから遠鉄百貨店のハンズでManhattan Portageの、CORDURAをつかったメッセンジャーバッグを買う。午後は国道一号線バイパスを東へ、児と掛川城天守閣と御殿で遊び、高久書店二階での短歌の種展を観る。一階のレジ横には『遠州灘』オートバイブックスやカディブックスの本が並べられている。

3月10日(日)

浜松科学館へ赴く。虹彩よさこいとアイドル路上ライブで盛り上がる北口広場で、ペストマスクをつけた大道芸人兼マジシャンのSyoがジャグリングのエイトリングをしている。

3月11日(月)

児の下の前歯が抜ける。

3月12日(火)

朝から雨。昼過ぎから風が強くなり雨を叩きつける。国道150号線沿いに辛夷が咲いているのを見る。16時前、雨が降っているのに太陽が出る。

3月13日(水)

非番。みそのの詩歌賞の会場下見で美薗中央公園へ赴く。昨日の雨で冷えたのかスーパーカブを走らせていると脚に悪寒がする。11時にE4の金子さん、佐原さん、そして審査員の白川ユウコさんと会い、花見広場の石畳あたりで話す。縁台を5脚ほど車座に並べる感じになる。

3月14日(木)

suiuの歌会のお題「根」に〈濡れている夜の根茎またたきは嘘をやさしさとは思わない〉という短歌を投稿する。

3月15日(金)

猫の恋な季節、磐田市小島には黒猫が多い。バイクを停めるとゆっくり道を渡る。

磐田市小島のホソバ垣と黒猫

3月16日(土)

詩客で自由詩西遠叙景が公開される。横山黒鍵さんの旗印と同日公開。私の「雨が紫陽花を/金色へ変える朝だって」と

そこに降るのは金色のあじさい(横山黒鍵旗印

の類似が異床同夢みたいでおかしい。朝に詩丼の葉書をつくり南図書館の差出函で投函し、プスプス byZINGでプスプス市2024春の陣の委託料を支払う。それから鴨江アートセンターのtotte・かもえのあさいちで乾久子『物語と時間』とPOWA POWAさんのpain de campagneを買う。昼飯は入野町のHappy Valleyでパスタとピザを食べる。

ツインギャラリー蔵

食後はすぐ北のツインギャラリー蔵で高林さんとチカさんが催しているときたま書房へ赴き『しずおか連詩 言葉の収穫祭』左右社を買う。買い物を済ませて卸本町の本町ビルに入居していることゆく社へ行き、児のことゆくラックを予約する。PAOで新薔薇的氷菓とKIKIミルクと山と海いちごのアイスクリームを食べて帰る。

3月17日(日)

ときたま書房でタテイシヒロシさんから受け継いだ浜松百撰の蔵書、「鳩よ!」十数冊を読む。東直子さんが1992年11月号に八王子市28歳主婦として詩で入選していた。探せばいまのビッグネームが投稿者として隠れているかも。

月蝕待つみずから遺失物となり/寺山修司(「鳩よ!」1990年6月号)

午後にクリエート浜松へ行き、オカリナの調べで時間を潰したあと第6回浜松私の詩コンクール表彰式に参加する。西遠女子学園の生徒が半分を占める部屋で、静岡県詩人会長賞のを朗読する。中高生の部静岡新聞社・静岡放送賞の太田桜子「羨望」は「でも」からの転回が巧い。

それを聞いた私は
自分の産声を
閃光のように思い出した(太田桜子「羨望」

浜松私の詩コンクール表彰式

3月18日(月)

春の疾風。詩客の短歌原稿をつくる。25首、題名はまだない。

3月19日(火)

昼に日銀会合でマイナス金利解除。今までの社会人生活はすべてマイナス金利だったけれどこれから変わる。帰宅後、「肉」の朗読を録音する。

3月20日(水)

suiuの歌会の題「散」へ〈散るためのかたちのままで蜆蝶さようならから風ははじまる 〉という短歌を投稿する。芹沢高志『この惑星を遊動する』岩波書店をパラパラ読む。フェニキアのシドンが庭園都市として出てくる。

結局は、惑星遊動民といったところで、その遊動性を保証するのは太陽と植物である。逆にいえば、この地球を遊動域とする以上、私たちはこうした地球生命圏の基本的なメカニズムに無頓着ではいられない。(『この惑星を遊動する』

南図書館で『平出隆詩集』思潮社を借りる。West Goat Coffeeでブラウニーとサクラブレンドを味わい、中出さんが村上春樹初期作品の独特で無国籍な街の感じを神戸と見ぬいていたのを知り驚く。『国境の南、太陽の西』を再読しようと思う。レジ横に置いてあるスプーンめぐみさんの絵本詩集『あなたとわたし』を買う。「ビートルズ」の頭韻がきもちいい。詩丼の葉書を棚に置いてもらう。

詩は、人が思うものとあまりに違いつづけてきた。そうに違いない、と思ういま、居酒屋の柵が傾く。(「胡桃の戦意のために」『平出隆詩集』

3月21日(木)

朝に『国境の南、太陽の西』を読み、イズミの従姉のくだりで笑う。右上の奥歯がしみないけれど噛むたびに痛む。夜、アーツ&クリエイション大谷さんから新都田のサーラ音楽ホールへ異動になったと架電がある。

3月22日(金)

詩客の短歌原稿をかなり手直しする。

僕は人々とのあいだに連帯感というものを抱くことができなかった。(村上春樹『国境の南、太陽の西』講談社文庫)

3月23日(土)

冷たい雨。朝、コメダ珈琲で時間を潰したあと卒園式でなにかやるらしい児を8時45分にこども園に届け、三島町のもへじ珈琲で迎えまでの時間を潰す。10時過ぎに迎えに行きバスで浜松駅まで出て、ザザシティ中央館2階の神戸クックワールドビュッフェで食べて帰宅する。

春の夢哀しく
  鶴の葬列見てしまった
(藤井以身『浮島のうた』新日本俳句社)

3月24日(日)

昼に歯科へ行く。痛みは虫歯ではなく咬合だったので削ってもらう。町に法被姿の人を見る、浜松まつりの準備だろう。昼は鍛冶町のブータンでカツカレーを食べる。食後にKAGIYAビルへ赴く。4階のカギヤギャラリーへムラキングと13時に入り、vol.5「アドニスの庭、窓の外の幽霊」を観る。キュレーターは一ノ瀬龍星さんで、曽布川祐さんと中村菜月さんの作品を展示している。曽布川さんと軽く会釈を交わす。会場で中村菜月『虹の街』を購う。West Goat Coffeeでインドネシア・マンデリンを飲みながらそれを読む。

虹の街の人々は、誰も虹を知らなかった(『虹の街』おめでとう)

雨が降りやまない。

kagiya galleryの雨漏りする明かり窓

3月25日(月)

小雨、帰りに一号線バイパスの新天龍川橋にて車線変更のトラックを待つため車間距離をあけていたらそこへ黒ミニバンが割って入りトラックの車線変更に急ブレーキ、私もブレーキを踏みリアタイヤがロックして制御できなくなり腰をふったまま50mくらい走行して終に左へコケる。左ミラーが折れる。怪我は左肘をすりむいたくらいですぐ立ち上がり走って帰る。

3月26日(火)

みそのの放送室で書いた記事、「公園には、移動目的を持たない者など、大きな物語でくくられるような文脈を持たない者たちが寄って来ます。漂流する遊歩者などですね」が路上生活者を肯定的に捉えていると公園長に受け取られてしまい、改稿する。それと、9月にクリエート浜松で宮沢賢治について話すことになりそう。

3月27日(水)

児の夜驚症がひどくて、深夜に妻が嘔吐する。朝、中郡福塚線で無蓋貨車に載せられ北へ向かう豚の耳を見る。suiuの歌会の題「舟」に〈舟唄のとぎれるときは蝦ひかる夕焼いくつ越えてきたのか〉という短歌を投稿する。

3月28日(木)

妻の急性胃腸炎のため仕事を休む。浜松城公園へ赴く。昼前に遺失物を回収しに浜松中央警察署へ出頭する。もろもろの用事を済ませこども園から荷物を回収して午後にふりだした催花雨のなか帰る。

3月29日(金)

午前に雄風、10時ごろに一瞬だけ豪雨、午後は晩春の陽気。浜松市で地下出版samizdatの需要と供給が成り立つだろうか、と考える、たとえば私的検閲本即売会とか。2024年可睡斎ひなまつり俳句・写真コンテストの俳句で優秀賞になったらしく図書カード2000円分が届く。でも句は忘れた。彡柳の投稿をはじめる。

3月30日(土)

午後に新川モールの能登半島地震チャリティイベントで神取忍のトークを聴き、united musicのJam9・ヤナギアオ・CLEEM MIKUの歌を聴く。

3月31日(日)

遠鉄に乗り、9時前に美薗中央公園の花見広場に着く。にゃんしーさん、石野さん、壬生キヨムさん、ぽよぽよ侍こと深尾さん、白川ユウコさんが集い、10時からみそのの詩歌賞の公開選考会をはじめる。自己紹介が終わったころに峯村さんが来場する。一首一句一篇ごとに審査員が選評を話し、それに対してあるいは和して参加者が評を述べる。「ハグ」の軽重や「確認」の主体はひとりかふたりかや句の作中主体は誰かなど、作品のひとつひとつのことばについてさまざまな解釈が飛び交う。最後に11時40分からひとり2票で多数決を行い〈他の人とはハグをしないと毎年の桜咲く頃確認がある/ぽよぽよ侍〉が一度の投票でみそのの詩歌賞に決まる。古典的な花・桜のイメージを脱せたか、多層的な読みを込められたかなどが各部門賞における選考の決め手となったようだ。パエリアと五平餅を食べてから岡井隆の話などをして、遠鉄で新浜松駅まで戻りWest Goat Coffeeへ寄ってから帰宅する。

肺尖にひとつ昼顔の花燃ゆと告げんとしつつたわむ言葉は/岡井隆

みそのの詩歌賞公開選考会

4月

4月1日(月)

毎日歌壇の水原紫苑欄に私の短歌〈夢のなかのわたしはわたしのままなのかはくもくれんのなかの生首〉が掲載される。

4月3日(水)

雨の一日。目を通したと言うためだけに南図書館で小池正博『はじめまして現代川柳』書肆侃侃房と暮田真名『宇宙人のためのせんりゅう入門』左右社を借りる。

残業がなければ川を見て帰る/楢崎進弘

4月4日(木)

彡柳百句をまとめる。詩客の俳句を多行形式でつくる。それと急に文語旧仮名の俳句連作30句をつくりはじめる。

4月5日(金)

非番。朝にメイワンのスタバで作業したあと、鍛冶町のブータンでメチャ辛チキンカレーを食べる。

ブータンの厨房

雨が降ってきたのでザザシティへ行くけれど「オッペンハイマー」鑑賞は上映時間3時間という長さにより断念する。West Goat Coffeeでニカラグア・アパナスとアップルパイを味わう。店主の中出さんと村上春樹小説のうろ覚えエピソードで盛り上がる。カウンターの下から村上春樹の本が次々と出てくる。銀行とリベロに寄り帰る。

4月6日(土)

こども園の保護者会副会長の任を果たし、文庫の絵本を整理する。子守で志都呂のカインズへ行く。南沼蝦と田螺のジャム瓶内生態系をつくりはじめる。

4月7日(日)

昼に歯科へ赴く。急遽レントゲンを撮られ、下に乳歯が2つ残っている奇跡を再確認する。ステインを磨いてもらいアルジネートを上の歯にあてはめる。市野のカインズへ赴く。

4月9日(火)

午前は雨、午後は疾風。新仮名の俳句連作を積み上げる。suiuの歌会のお題「靴」に〈靴底はすり減っている歩くたび脳の襞へと星屑の降る〉という短歌を投稿する。今年はじめて燕の飛ぶを見る。

4月10日(水)

suiuの歌会のお題「伽」に〈彩花から彩伽になろう変わらないものの名前に王都を樹てる〉という短歌を投稿する。短詩電誌を考えはじめる。燕の巣のできかけが湿っている。児の防風外衣に尺取虫がついており、瓶にいれ桜の葉を与えると食べる。

4月11日(木)

Сакураи部長が4月1日に来てから2週目、彼は配達員に前日大区分を超勤ではやらせない。ゆえに以前よりも多く超勤をしてしまう。彼には彼なりの理想があるのだろうが、彼は理想を語らないので彼が何をしたいのか私にはよくわからない。帰ると尺取虫が糞をしている。

4月13日(土)

詩客で短歌連作しっぽり太ゴシックな午後が公開される。午前に尺取虫へ与える桜の葉を採る。午後にブックオフ高林店へ赴き野坂昭弘『詭弁論理学』中公新書とスピッツのベストアルバムを買う。それから四ツ池公園の前にあるOORT CLOUD COFFEEでマイルドのホットを飲む。四ツ池公園にある浜松球場で浜松西高校と浜松北高校の野球定期戦を七回裏から八回表まで観戦する。浜松西にはブラスバンド演奏がついていたが、浜松北には十数人の保護者しかいない。プスプス byZINGに『彡柳百句』を納品する。南図書館で借りた『ピクセル百景』グラフィック社を読みながらピクセルアートをつくりはじめる。

pixelart plenluno

4月14日(日)

子守で浜北の平口から西へ。国道362号線で気賀を通り、都筑交差点から浜名湖レークサイドウェイを走る。瀬戸橋から国道301号線に入り、大知波から多米峠を越える。豊橋公園の吉田城鉄櫓を観て、10時に花火の号音に驚く。同じ公園内にある豊橋市美術博物館の美術コレクション展で菅木志雄の集律や設楽知昭のCinerarioや伊藤誠の建築模型のような98・記憶1などを観る。ミュージアムカフェのネオコスタリカのランチメニュー、黒カレーがしゃぶりたくなるほど美味。そこで、短詩電誌は化石律 fossil verseにしようと思いつく。帰りに井伊谷宮と龍潭寺に寄る。稲荷堂あたりの廊下の入り組み様が好き。

龍潭寺の萬松稲荷・正夢稲荷

4月15日(月)

郵政福祉のRinRin第253号「心の詠み人」の水野タケシ選川柳欄に私の〈サブスクにない曲ばかり聴きたがる〉が入選したとお知らせが来る。短歌連作50首にとりかかる。

4月16日(火)

毎日歌壇の水原紫苑欄に私の短歌〈夕焼けをいくつも越えたまなざしで西の羊は珈琲を出す〉が掲載される。West Goat Coffeeについての短歌だけれど西の山羊ではないのは村上春樹の羊男にひっぱられたから。南図書館から歌集を2冊借りる。RinRin第253号の件で北谷雪さんからDMをいただく。

心だけ配信できるならわたし素敵な番組できると思う/伊藤紺(伊藤紺『気がする朝』ナナロク社)

4月17日(水)

今朝3時ごろの児の夜驚症は、踵落としとサイレンのような泣き声、「ハナミズ!」と叫びながら鼻をかませようとすると嫌がる、を30分ほど。朝は大雨。suiu歌会のお題「枷」に〈首枷は首飾りにもなるという油のごとき言葉で磨け〉を投稿する。名塚交差点から見たアクトタワーが霾でぼやけている。

4月18日(木)

夕方から雷雨。プスプス市についての投稿で出品者として私が紹介されていたけれど、別名義のアカウントへリンクされている。みそののお花見でも類似のことがあったけれど、instagramでイベント告知をする主催者はなぜ事前にリンクしていいアカウントかどうかを出店者に確認してからリンクをしないのだろうか。そういう慣習もであるのか。とにかく、ひたすら良作を生み出していくしかない、ひたすらに。

4月19日(金)

朝に雨、午後から風。言語活動家を名乗ろうと思う。現代美術界とは隔絶して活きる。

4月20日(土)

早朝に右太腿がひきつけを起こす。週5日でずっと一区をやってきたからか体が疲れている。子守で駅前へ出て浜松科学館へ赴き、「すみっコぐらしひろい宇宙とオーロラのひかり」を観る。俳句連作50句をまとめる。

ふいにわが内に展きし帆がありて脹らむ蝶が麦越えしとき/平井弘

4月21日(日)

マジョール種のデーツ、つまり棗椰子の種を水に浸けはじめる。俳句連作20句をまとめる。さらに俳句連作30句に多行形式でとりかかる。上浅田の歯医者で上の歯のマウスピースをもらう、前のより厚くて丈夫。それから歩いてプスプス市春の陣2024を見に行く。でするなさんのCD『NUI!』とシールを買ったりhiの珈琲を飲んだり筆談をしたり熊谷さんこと近江木の実さんの小句集『小さき背』を買ったりたなかこむぎさん製作の小川未明の書物を愛でたりする。昼前に歩いて鴨江アートセンターのHUISのイベントへ赴く。午後は雨、子守で可美公園南東のCafe La Paix Lionへ行く。老夫婦がやっていてアットホームな感じ。

自転車を飛ばすつつじとどこまでも/近江木の実(『小さき背』

4月23日(月)

春の陽気にからだが追いつかず気怠く、眠い。土曜休配がはじまったときは物数の増える月曜日は補助を入れると言っていたのに、3年も経たないうちに人員不足を理由に月曜日の補助がないのが常態になりつつある。

4月25日(木)

duolingoは職場でトルコ語を進め、家でドイツ語を進めている。ドイツ語はKafka Projekt 23→24と最近刊行されたカフカの短編集や日記の影響、いつかDie Verwandlungくらいは読めるようになりたい。短歌連作50首のテーマが決まる。

4月26日(金)

suiuの歌会のお題「毛」へ〈りんごにはすね毛がはえて良識の府ではしばしばいがみあうのさ〉という短歌を投稿する。南図書館でいろいろ本を借りる。

原因は、活版印刷から平版印刷への完全な移行である。そうなってはじめて気づいたのは、自分が活版印刷の本を、活字を圧しつけたりインクを乗せたりしたときに生じる紙の表面の凹凸をがしっと目でわしづかみ、その立体性をよすがにして識字をおこなっていたという衝撃の事実だった。つまり点字さながら文字を目でさわっていたのである。(小津夜景「文字の生態系」『ロゴスと巻貝』KTC中央出版)

4月27日(土)

子守り、俳句連作20句(多行形式)を投函する。高柳重信の多行句を、いぬのせなか座の山本浩貴は改行俳句と書いている。そう、多行句にとって行の単・複・多なんてことは問題ではなく改行こそが焦点なのだ。福本義憲『はじめてのドイツ語』講談社現代新書を通読してドイツ語はやっぱり無理だなと悟る。南図書館で『谷川雁詩文集 原点が存在する』を借りる。

革命月の小料理屋なんてまっぴらさ(谷川雁「帰館」『谷川雁詩文集 原点が存在する』講談社学芸文庫)

4月28日(日)

8時に家を出て、牧之原サービスエリアを経て、静岡市清水区にある日の出親水公園で開催されている船とハナウタへ赴く。日の出パーキングに車を停め、菓子処白木屋さんの黒ゴマどら焼きとふわり山ふわりさんのブルーハワイとCAFE LIKEさんの自家製クラフトコーラを購う。安本奈々さんが大きなキャンバスに夜鷹を描いている。波止場という立地が良い。帰りに栗の花におう丸子の駿府匠宿へ寄る。タテヨコナナメに力が入っている。匠宿内のThe COFFEE ROASTERにてカプチーノを飲む。帰宅後19時くらいから近くの神社から浜松まつりのお囃子の練習が聞こえてくる。

匠宿TetoTeto

4月29日(月)

1$が160円まで値を下げる。新たに俳句連作10句にとりかかる。国道257号線を通り愛知県新城市の旧門谷小学校で開催されているCabane de Souqへ赴く、昔はスーク緑の10日間だった。焼き鳥とMOROCCOさんのカーキ色のハット帽子とMinetteさんのランチボックスを買い、番号札をとりそこねてもlapin et painさんの1/4ブリオッシュとバナーヌとチョコチップクッキー3枚をなんとか買う。音為川へ下りる。

晩春の舌は肉よりはじまるか/三橋敏雄

旧門谷小学校前の音為川

5月

5月1日(水)

詩丼の出店者応募受付が6時にはじまる。suiuの歌会のお題「穴」に〈洞穴と家とが同じ語源から派生、の言語 鬣へ風〉という短歌を投稿する。

5月3日(金)

早朝から俳句関係の郵便物をつくる。10時に浜松まつりの花火が鳴る。自由律を数句つくる。自由律・随句は軟質だけれど、だからこそ庶民文芸の器になっている。夕方に神社横から練りに出る屋台を見送る。短歌連作300首にとりかかる。すでに余分にあるのであとは推敲と削減のみとなればいい。

いい風がきてうわの空(岡田幸生」『無伴奏』ずっと三時)

5月4日(土)

詩客で多行俳句連作ゴムボックが公開される。豊田市へ赴き、豊田市博物館の常設展と坂茂による紙の間仕切りシステム(PPS)とウクライナ人による戦争詩の展示ペーパー・サンクチュアリを観る。バシルの詩に、ウクライナ人が抱く日本の学生への、特にその下宿風景への印象を知る。

お金がなくて
私のアパートにはまだ家具がない。
壁には本が山積みになっている、
日本の学生の部屋のように。
(バシル・ホロボロドコ、「家具なしのアパート」

豊田市博物館庭園でやっていた-ing at marcheで、文藝フルーツさんのいちごオーツミルクジェラートを買う。フルーツの多様性や人の味わい方と文化芸術への人の感じ方が類似しているという話を聞き、共感する。偶然にも庭園で中小路太志さんと会う。豊田市美術館はミュージアムショップで満足する。人生にはときどきミュージアムショップ分が必要だ。この栄養分によって磐球世界を発案する。美術館の企画展は、秋のアナキズムと美術がおもしろそう。豊田市には財政力がある。

豊田市博物館

5月5日(日)

短歌連作300首まで絞る。興味の範囲を中高生のときの興味で限定すると、「万葉集」「トルコ語」「東周史」となる。そこから「万葉集」を「詩歌」にアップデートして「スピノザ」「情報技術」「ボードゲーム」を加えると今の興味の範囲、つまり活動の範囲となるだろう。にゃんしーの短歌連作50首を読ませてもらう。昼に錦華楼千歳本店で餃子を食べ、West Goat Coffeeでゲイシャを飲み、『更級日記』を読み始める。孝標女の姉が不思議なことを言う。23時近くまで浜松まつりの喇叭が聞こえる。

ただ今、ゆくへなく飛び失せなば、いかが思ふべき(菅原孝標女、原岡文子訳注『更級日記』角川文庫)

5月6日(月)

黄金週間最終日、川根本町のてんでんこへ行きたかったけれど、家族会議でごり押しされ豊橋駅前のemCAMPUSへ潮見坂経由で赴く。大豊商店街の出店で犬用の食品を売っているDog kitchen HEROさんからアボガドや無花果の皮と種の話を聞いているとき、児が失踪し一悶着ある。発見ののち、豊橋市まちなか図書館のひとひとCAFEで東方美人を二煎ほど飲む。

淒淒四月闌
千里一時綠(李賀「長歌續短歌」

5月7日(火)

昼まで強い雨、ゴム長靴が水浸しになる。俳句連作150句にとりかかる。

5月8日(水)

からだが怠い。suiuの歌会のお題「母」へ〈子音みな母音から飛び立つ夜をたった一度のみなみかぜ吹く〉を投稿する。帰局後18時過ぎ、切手代を書類ケースに入れて局内を歩いていたらСакураи部長から呼び止められて「ビジネスマンじゃない」と罵倒される。指摘はもっともだが、そういうのはビジネスマンから言われないと効果がない。